2014年10月31日金曜日

着々と追い込み中

さて一体コレは何でしょうか?
深さが2m近くある大きなお風呂を重ねたような物体が4つ。
土の中深くに埋められています。
船の素材としても使われるFRP製です。


何とこれは汚水浄化装置なのです。
それもバクテリアの働きにより汚水を分解処理し、その汚水を蒸発散によって土の中や空気中へ戻すという システム。

下水道の通っていない地域では合併浄化槽を使うのが一般的ですが、電気代は必要ですし、年に数回の汲取と点検に結構なお金もかかりますので、今回は数年に一度の汲取だけで、電気も使わないほぼメンテナンスフリーのこの浄化槽を採用しました。



そしてキッチンは見事に仕上げられています。
土が立ち上がったようないい色しています。

新しい試みが盛りだくさん過ぎなのです。


2014年10月29日水曜日

坂のまちのリノベーション

11月29日(土)に京都造形芸術大学の「秋の収穫祭」というイベントのひとつとして『坂のまちのリノベーション』と題し、特別講義を担当することになりました。

1時間ほどのレクチャーとその後はまちを歩きながらのフィールドワーク。

その準備のために尾道を歩いてきました。



カメラが傾いているのか、家が傾いているのか・・・。



土壁の上に板が貼られ、さらにはトタンで覆われ・・・
それがひとつずつ自然に剥がれ落ち・・・



左のピロティ部分の柱は重みに耐えきれず・・・
もしかしてはじめからスロープになっているとか・・・
















とまあぼくが「歴史的廃墟」と名付けた建物はそこかしこに、珍しくもなく建っているわけなのですが、しかしこうして写真に撮って家で見てみると宝のように面白く、貴重ですね。

魅力のあるまちです尾道。
最近は特にサイクリストがみるみる増えているのを感じますし、これからもっともっと増えるでしょう。

そんな坂のまちがどのようにリノベーションされているのか、もちろん建物はそうなのですが、ぼくはここで暮す人に焦点を当ててお話をしようとストーリーを練っているところなのです。

2014年10月27日月曜日

塗るという仕上げいろいろ

現場は間もなくの竣工を目指して追い込み状況。
この建物は現代の新築住宅のような気密性は全くなく、ですので断熱性能もほぼ期待できないくらい外と一体なのですが、それではさすがに寒かろうと、床暖房を採用しています。

化石燃料をなるべく使わないという目標がありますので、床暖房を暖めるためにはお湯を使い、そのお湯を温めるために薪ボイラーを使います。
普通はガスや電気を使って水を温めるのですが、薪(木を)を燃やして水を温めお湯にするという仕組みです。

さらに、暖められた床に蓄熱性を持たせることが床を暖め、部屋を暖めるためには効率が良いのではないかと言うことで仕上げを何とモルタルにしているのです。
タイルや石を貼っている例はありますが、モルタル仕上げというのは潔く、挑戦的でもあります。

冬のモロッコを旅していたとき、寒々しいモスクに靴を脱いで入ったら驚いたことに床が暖かく、身も心も温まったことを思い出しながら。



そしてキッチン、こちらもモルタル漆喰仕上げです。
まだ下地の状態ですがこれから仕上げられます。

キッチンの配置も壁際に追いやることなく、日当り良く、家の中心、土間の真ん中に鎮座している感じです。
 一番気持ちのよい場所で料理をしてもらいたいので。



それから壁。
いつの間にかこんな素敵な仕上げがなされ、しびれました。
もちろんこの稲はお施主さんが自ら育てられ、収穫されたばかりの秋の恵みです。



今回は腕も良く、気もやさしい左官屋さんに出会えたことでいろんな場所で塗るという仕上げをすることができ感謝です。


2014年10月24日金曜日

HELLO, TREEHOUSE HILL!!

ぼくが暮す広島県福山市は人口47万人、広島県では広島市に続いて大きな地方都市です。瀬戸内に面しているので海の幸も豊富、北部には中国山地へ続く山が控えているので山の幸も豊富、最近の2つの台風がすーっと逃げたように自然災害も少なく、気候も穏やかでとても住みやすい環境、であるはずなのです。

しかし、車を中心に考えられた街になってしまっているため歩いて楽しい場所は少なく、公園と名のつく場所はあるけれどそこはぼくが想像するような公園ではなく、適当に樹が植えられ、延びたら切られ、適当な遊具が置かれ、植えられた芝は養生シートがむき出しになり、噴水には藻とゴミがはびこり、水もドロドロになった石積みの池があり・・・と、まあとても憩えるような状況ではなく、むしろ殺伐とした印象をいつも受けているのです。


この広い公園の中心にはたくさんのバラが植えられた丘があり、手入れはされているのですが、バラが咲くのは一年のうちほんの数週間だけです。それ以外の時期はいつもガラーンとまさに刺々しい丘なのです。

そしてバラが咲いてる時期は早朝から農薬散布、散布、散布!!!
そんなに虫たちを殺さなくてもいいのでは?

バラの花に顔を近づけて「あ〜いい香り〜」ってやってるのも実は危険だったり。



そこで考えてみました。

<TREEHOUSE HILL ツリーハウスの丘>

大きな樹をたくさん植えて、その樹にはいろんな形をしたツリーハウスをつくり、大きなブランコを吊るしたり、樹の上を通り抜けるような橋を巡らせたり、回るすべり台をつくったり、ハンモックを吊るしたり、小さなカフェがあってもいいじゃないですか。

何よりこどもがいっぱい楽しめる公園、もちろん大人もわくわくするような公園にしたいですね。




福山の環境をもっともっと活かせばとっても住みやすい、気持ちのよい、やさしい街ができるはずなのです。可能性は十分あり。

ぼくが大好きなルイス・I・カーンという建築家の言葉をいつも胸に。

"A city should be a place where a little boy walking throug its streets can sense what he some day would like to be." 
「都市とは、その通りを歩いているひとりの少年が、彼がいつの日かなりたいと思うものを感じとれる場所でなくてはならない。」

2014年10月13日月曜日

竹と土の壁

かつて日本では家の壁をつくるのにまずは竹を割いてメッシュ状に編んだ竹木舞(たけこまい)というものをつくりそれを柱と柱の間に組み立て、そこに土を練って団子状にしたものを詰め込んで隙間をふさぎ、その上にもう一度土だったり漆喰だったりを塗ったり、板だったりを貼ったりして仕上げていったものです。

ほんの100年前、いや50年ほど前まではそれが当たり前で、だから職人さんもたくさいました。

僕の住む築40年の家も外壁部分の下地は全て土です。

しかし今ではそのつくり方はむしろ高級な構法で、ぼくも今までそんな家を設計する機会はありませんでした。

今改修中のこの古民家は一部土壁が崩れてしまっていたのでその部分を補修してもらっています。
そしてこの竹木舞の美しさにやられました。
隠してしまうのがもったいないくらいの美しさ。
長い外国旅行から帰ってきて、久しぶりに味噌汁を飲んだときのような心の奥へ染みる感覚。

これが正しいつくり方なのではないだろうか。

竹も土も近くで手に入る材料、燃えてしまったとしても害はなく、朽ち果てたとしてもいずれ土に還ります。



そして五右衛門風呂のその後です。
レンガはさらに積まれ風呂釜の回りを固めていきます。


2014年10月6日月曜日

古墳か?
















これは古墳の内部だろうか、それともピラミッドの内部だろうか、はたまたアンデスの山奥の?
まるで棺かミイラをおさめるための空洞のような造形的で美しい形です。

いやいや、なんとこれは五右衛門風呂を暖めるための薪を炊く部分+煙の道なのです。
この空洞に薪をくべ、風呂釜を暖めるのです。

ぼくは思いました。

ユニットバスは確かにすばらしく機能的で、安心で、安価で、清潔で大変良い製品ではあるけれど、この空洞を見せられてしまうと心動かされずにはいられません。
レンガを積んで、土で固め、火の形、煙の流れを想像しながら形をつくりあげていく、その手の作業、手の跡は家をつくる上で、生活を考える上でとても大切にしなければいけない部分です。

毎日このお風呂に入る生活をおくればそれは身も心も優しく暖まることでしょう。

風呂釜は作業の邪魔にならないよう釣られていました。
鐘のようであり、それもまた愛嬌あり。


こちらはキッチン。
キッチンというより台所です。
これも漆喰で仕上げます。

土間の三和土の上にこの漆喰の大きな台所がドンッと構えるのです。