2015年6月15日月曜日

因島の家の内部公開

先日無事に竣工しました因島の家の内部写真です。
改修を考えている方へ向けてのオープンハウスをしたいと頭の中では計画しているのですが、竣工、引き渡し、引越しというのはいつものことながら余裕がなくなってしまい、その時間が取れずバタバタとしてしまいます。

ですので写真だけでも見ていただいて参考になればと紹介いたします。

2Fの洗面、ミニキッチン、雨の日の物干し用の部屋。
天井を取り払い高くしたのでのびやかな気持ちの良い場所になりました。
朝起きて、明るい場所で顔を洗って欲しいという思いから。


和室。サッシの黒と、畳縁の黒が良いリズム。


2Fリビングのロフト空間。
バッテン筋交いは補強です。
既存の梁を利用して床を貼ったので天井高は取れませんでしたが、物置、ちょっとこもる場所としては十分利用できる隙間空間です。
ロフトは男心をくすぐるらしい。







そのロフトへ上るためのハシゴ。
それほど頻繁に上る場所ではないので一段目に腰をかけられるようにベンチ風にしてみました。



1F和室の障子。
桟を細く、障子の枠を正方形に近く、広くとるデザインにしています。
写真では分かりにくいですが壁は薄いグレーの漆喰を塗っています。






これが改修前の状態。築40年ですので、まさにその時代を象徴する作り方と仕上げ材。我が家と一緒とだと思われる方も多いのではないでしょうか。

2015年6月2日火曜日

因島では第1作目

因島で改修工事中だった築40年の住宅がついに、やっと竣工し、引き渡すことができました。
着工してから半年以上、設計を始めてからもかれこれ1年以上、新築よりも時間をかけて見事によみがえりました。
これぞ「新築そっくりさん」。

当初の計画では2階部分を増築してもっと大掛かりな設計をしていたのですが、最終的にはむしろ一部を減築するだけでほぼ同じ広さで仕上げることにしました。

広島に帰ってきて初めての大きな改修物件で、それも島でこの仕事ができたこと、大変感謝しています。

改修前の様子。
地盤の沈下による傾きあり、瓦も踏んだら割れるくらいの劣化。



外壁を取り土壁が出てきて裸状態にされつつあります。


サッシも取ってまさにスケルトン。
生まれたての鳥の赤ちゃんを見ているようです。




そして完成!



内部の様子は改めて紹介します。

2015年5月28日木曜日

今更ながらご報告

このブログでも以前紹介した「はちみつハウス」、何を隠そう、いえ何も隠すことはないのですがアトリエ アーキツリーの事務所兼自宅なのでした。
今年の2月ごろから改修工事を始め4月には何とか使える状態になり、引越してからも工事は続いてもうすぐ2ヶ月が過ぎようとしています。
ここ最近になってやっと少し落ち着いてきたかなという状況なので今更ですがご報告。

そうなのです、アトリエ アーキツリーは4月より福山市から尾道市の向島へ拠点を移したのです!

ここ向島は瀬戸内海に浮かぶ小さな島ではありますが、しまなみ海道の本州側から一つ目の島で橋で渡れば20秒、フェリーで渡っても5分、泳いでも渡れるくらいの目と鼻の先にあるのです。
尾道からの距離はほんの200mという近さ、まるでヴェネツィアのようにフェリーに乗り現場へ通うという生活ができるのです。



築90年のとても広い民家の1Fを事務所スペースとして使っているのですが、ここにはときどきたくさんのこどもたちが集まることもあるので、いつでも移動できるようにテーブルと椅子とPC、最小限の資料だけを置いて仕事をしています。
ときには縁側座ってみたり、本棚のベンチに腰掛けたり、新しい仕事のスタイルに挑戦中。

これはパーティーで使った長さ3.3mの合板をテーブルにした場合。
厚みが薄い上、長いのでびょんびょんとしなり落ち着かず。
しかしこの薄さは美しい。



これはこどもたちが床に座ってレッスンをした後、そのまま使ってみたけれど腰が痛くなりすぐに断念。
庭への目線の広がりは気持ちよい。



これは一番お気に入り、畳一枚分の板をL字型に並べた状態。



GWにはクラリネットとバイオリンとダンサーの方が来てこんなライブもやりました。



というように、とても楽しく、のびのびと、いきいきとかつエキサイティングに島での活動をはじめています。

お近くにお越しの際はサイクリングの途中にでも、釣りの帰りにでも寄ってみてください。
場所はこちらです。



722-0073広島県尾道市向島町1943

2015年5月26日火曜日

新旧の交わり

着工から半年以上、設計を始めたのは去年の1月、新築よりも長く時間がかかってしまっている因島の2世帯住宅、ついに竣工間近になりました。

埋め立てられた土地なので地盤の沈下もあり、その対策として家全体をジャッキアップして既存の基礎の下に杭を打ち込んでまっすぐ起こしたのですが、それでも長年の家の傾きがひどく、水平垂直を整えるのにかなり苦労したようです。
大工さん泣かせ。

しかしそのおかげで文字通りの<新築そっくりさん>に生まれ変わりました。
この古い梁が見えていなければ改修だとは思えないかもしれません。



真ん中のバーは物干し用です。
2Fの天井を取っ払い高くしたのでそこにスペースが生まれています。
日当たりも風通しも良いので洗濯物はよく乾くでしょう。



柱は細く頼りなかったので12cm角の新しいものに取り替えました。



白い壁に吸い込まれそう。
若干くらっとしてしまいます。



ロフト部分。
左のバッテンは補強です。


ちなみにこの現場へはこんな風景を見ながら爽快に通っているのです。
瀬戸内万歳!




2015年4月15日水曜日

またジッソク

今日の実測はこんな風に遠くに尾道城を臨む位置に建つ築70年余りの古家です。
尾道城は城として使われていたものではなく、新しく建てられたものなのでそれ以上の価値は見いだせないのですが、どこからでも見えるランドマークとしては重要な役目をはたしています。


さてこの古家は空き家になって数年が経っているのですが、つくりがとても丁寧で、職人さんの技とセンスがそこかしこに散りばめられているのです。
この大工さんにならぼくが設計した住宅も手がけてもらいたいと思えるほど見事。

まずはこの階段。
背面の壁に塗られた漆喰の色使いも勉強させられます。
2Fの縁側からそそぐ光の美しいこと。




天井に取り付けられた裸電球のソケットは木製。
それも工芸品並みの質です。
天井に貼られた板の割り付けも潔いし、白っぽい色合いも当時は珍しかったことでしょう。


続いてこの照明。
北欧のアンティークにでもありそうなデザイン。
垂れ壁の黄色もセンスが光ります。



そして天井裏をのぞいてみると、これがまた几帳面なこと。
ここは隠れる場所になるのでまあいいかという気持ちがどうしても表れてしまうものなのですが、棟木も梁も根太も野地板もすべてがビシッとおさまっています。

まるで数寄屋に通じるような材料の選び方、使い方、おさまり方。
そうか、もしかしてこの大工さんは数寄屋をやっていたのかもしれません。

こういう建物に出会うと今を生きる者として襟が正されるのです。ありがたい。




2015年4月4日土曜日

今は同じ2枚の玄関扉

因島の住宅は2世帯へのスケルトンリフォームなので玄関の扉も2枚あります。
今回は予算の関係もあり、既製品の枠に木製の建具を取り付けることにしました。
今は同じに見える扉ですが、これからオイルを塗ったり色と塗ったりすることで表情を変えていきます。

1Fと2Fへ来たお客さんが間違えませんように。



2Fは天井を取っ払い、ロフトを取り付けたので改修前の様子が想像できないくらい変化しています。
断熱材をしっかり入れていますので夏の暑さも心配ないはず。


こちらも竣工間近。

2015年3月25日水曜日

ジッソク!

尾道水道を臨む坂の途中にはかつて別荘や迎賓館のような使われ方をした建物がまだまだたくさん残っています。
状態はさまざまですが、これらの建物が尾道の風景をつくっていることは間違い無いのです。

さて、改修を依頼され本日実測に伺った家もそんな家のひとつ。
2Fの一番立派な造りをした和室はそこに佇んでいると今でも当時の名残りが感じられるほど、職人さんの跡がそこかしこに見えるのです。



その和室の南側には狭いながらも日当たりの良い縁側があり、そこからは尾道水道のパノラマを楽しんだことでしょう。
残念ながら今は駅前のマンション群に立ちはだかれ、海はわずかしか見ることができないのですが。

窓を開け、「こんな風景に誰がした〜」と叫びました。



この家も築100年近いですから傾きも歪みも雨漏りもシロアリも・・・。
しかしそんなことではもう驚かなくなりました。

ドンと来い、キラッと光らせてやろうではないかという意気込みで。

2015年3月16日月曜日

因島の家も着々と

最近、街を見ると解体される家が増えているように感じます。
今にも倒れそうだけれど昔から街に馴染んでいたお店や住宅、その見慣れた風景が崩され、空き地が増えるのでしょう。

「空き家対策特別措置法」の施行を前に持ち主の方が先手を打ってるのか?

空き家だらけのこの街、あの街はどう変化していくのでしょうか。

さて、壊されることなく改修工事の進む因島の家、水平垂直の調整に大工さんは予想以上の苦労をされているようですが進んでいます。

2Fは天井を取り払い、一部ロフトにしています。
ぼくは天井というものがあまり好きではないらしい、使われていない空間に風を通したい、ということに気がつきます。



1Fはこれから壁がつくられ部屋に仕切られようとしているところ。
この柱を見せてどーんと広々した使い方も好きなのですが、収納も必要ですし、隠したいものもあるでしょうし、住みこなすのは難しいかな。

「31」とは大工さんの暗号でしょうか?


2015年3月11日水曜日

はちみつハウス着々と、その2

向島のはちみつハウスの工事も順調に進んでいます。
2月中になんとか2Fの床を貼り終え、1Fの壁には白い漆喰を塗りました。

床材に選んだのはこの辺り(四国も含む)で育った杉の無垢板。
既存の床がそもそも水平ではないので、それを気にすることなく貼れるようフローリングのような実(さね)をつくらず、板をそのまま敷き詰めるように貼ることにしました。
少しの隙間ぐらいは気にせず、生地のまま塗装もせず、独特の迫力ある雰囲気に仕上がってきました。



壁はかつて改修された時になんとも表現に困るような緑色の化学的漆喰が上塗りされていましたので、今回はさらにその上からドイツの白い漆喰を塗って明るくすることにしました。
何しろ塗る面積が広いですから週末3回に分けて大人や子供を集めて手伝ってもらい、せっせせっせと塗りまくりました。
子供たちは裏山でキジを見つけて大興奮したり、山道を散歩して自然と化したみかんやレモンを食べてと大喜びしたりと。



しかししかし、問題もありまして・・・。
玄関を入ってすぐの柱、改修された時に新建材でふさがれておりあやしなあと見て見ぬ振りをしていたところなのですが、そこをはぐってみたところやはり思った通り、シロアリに食べられスカスカ状態。
しかもしかも、現役でシロアリがうごめいているではありませんか。

この柱は2Fを支えている重要な柱なので補強をしなければいけないのですが、その他のからみが難しく頭を悩ませています。



古い家に住まれている方で、水回りなどを改修したときに柱や梁を湿気を通さないような新しい材料でふさいでしまっている方、どうぞご注意をしてください。

2015年2月23日月曜日

はちみつハウス着々と

向島の築90年の見事な家、「はちみつハウス」と名付け着々と工事が進んでいます。
その様子をまとめて紹介します。

梁の上に溜まった泥と埃を落とし、雑巾掛け。梁には手斧(チョンナ)で削った跡がのこっているので、その肌を手で感じながら。

床には20mm程度の松の板が千鳥に貼られています。釘がよく効いていてなかなか抜けない。


床に貼る材料を木材やさんにチェックに行きましたが、何せ80平米と広いので足りない部分を無理言って用意してもらいました。

四国の杉板24mmを敷き詰めます。



床の不陸も味として、現状の上からそのまま貼ります。



1Fでは日本家屋ではよくある薄緑色の壁に白い漆喰を塗るため養生中。
この作業が塗る作業より大切で時間がかなるのです。



それと同時に1Fの天井に貼られていた合板を取り払って、梁を現しました。
この構造体(骨組み、軸組)が見えることが日本建築の醍醐味なのです。

写真の部分には薪ストーブを置くため、床を補強してもらっています。


このはちみつハウスは工事中の今から見学者、来客がとても多く、人が集える場所になりそうです。

どうぞお楽しみに!

アーキツリーのfacebookページも合わせてごらんください。


2015年2月2日月曜日

因島といえば村上水軍

2月に入り、瀬戸内温暖気候の因島もさすがに寒くなってきました。
先日は珍しく雪もうっすらと積もったそうです。

さて、現場は順調に進みサッシが入ったことで家らしくなってきました。
といっても外壁も内装もまだこれからなのですが・・・。

床は大引きと根太が渡されただけ状態ですので、移動するときは平均台の上をジャンプしているようでスリルがあります。
運動不足のぼくは踏み外さないよう要注意。


屋根を撤去して広げたテラスからは、かつて村上水軍が約260年もの間、本拠地として城を構えていたという青陰山が見えます。この山は不思議なほどにどこからも見えるそうで、尾道の千光寺からもよく見えたとか。この現場もしかと見守られていることでしょう。




2015年1月13日火曜日

小屋組に痺れる

2015年は因島と向島というしまなみの2つの島から仕事が始まります。

因島では築40年の住宅のスケルトンリフォーム。地盤の沈下により傾いた家を元に戻し、内壁はほぼすべて取り払って柱だけの状態にし、間取りも変更して、キッチン、お風呂などの設備類も総取っ替えします。
古い家を壊して新築することは簡単ですが、こうして思い出の詰まって家をリフォームして甦らせる面白さが木造にはあるのです。

そして向島では、国の重要文化財「吉原家住宅」にも劣らないくらいの小屋組を持った住宅の改修が始まります。外観は瓦を吹き替えたり、壁を塗り直したりされているので何の変哲も無い住宅に見えるのですが、その2階の天井を見上げて驚くこと。これを組み上げた職人さんたちの誇らしげな顔が見えてくるようです。



かつては蚕を育てたり、農作業をするために使われていた2F部分を今の生活に合わせ広〜いLDKに変身させます。

ご興味のある方は是非とも見学+お手伝いに来てみてください。

どちらも3月竣工予定です。


2015年1月8日木曜日

2015、幅広く

因島の家へ行くと、ちょうどテラスにする屋根部分を解体したところで、空がきれいに見えました。
年末に金沢の21世紀美術館で見たジェームス・タレルの部屋のように。

壁だけで切り取られた空はとても美しいです。
できることならこのまま屋根もないほうが・・・なんて妄想しながら。



赤いテープの貼られた柱は取れない柱。
黄色いテープはできるなら取りたくない柱、緑のテープは取っても問題ない柱。

解体してみなきゃわからない部分もあるのです。
さて、頭をもうひと捻りしなければいけません。




コンクリートブロックに乗っかっていた通し柱も無事に補強されていて安心しました。

























2015年、はじまりました。
今年はさらに幅を広げ、ぼくがやるべきこと、やりたいことをどんどんと動かしていきたいと考えています。

そしてこの瀬戸内文化圏がもっとすばらしく、もっとたのしくなりますように力を発揮したいと思います。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。