2015年4月15日水曜日

またジッソク

今日の実測はこんな風に遠くに尾道城を臨む位置に建つ築70年余りの古家です。
尾道城は城として使われていたものではなく、新しく建てられたものなのでそれ以上の価値は見いだせないのですが、どこからでも見えるランドマークとしては重要な役目をはたしています。


さてこの古家は空き家になって数年が経っているのですが、つくりがとても丁寧で、職人さんの技とセンスがそこかしこに散りばめられているのです。
この大工さんにならぼくが設計した住宅も手がけてもらいたいと思えるほど見事。

まずはこの階段。
背面の壁に塗られた漆喰の色使いも勉強させられます。
2Fの縁側からそそぐ光の美しいこと。




天井に取り付けられた裸電球のソケットは木製。
それも工芸品並みの質です。
天井に貼られた板の割り付けも潔いし、白っぽい色合いも当時は珍しかったことでしょう。


続いてこの照明。
北欧のアンティークにでもありそうなデザイン。
垂れ壁の黄色もセンスが光ります。



そして天井裏をのぞいてみると、これがまた几帳面なこと。
ここは隠れる場所になるのでまあいいかという気持ちがどうしても表れてしまうものなのですが、棟木も梁も根太も野地板もすべてがビシッとおさまっています。

まるで数寄屋に通じるような材料の選び方、使い方、おさまり方。
そうか、もしかしてこの大工さんは数寄屋をやっていたのかもしれません。

こういう建物に出会うと今を生きる者として襟が正されるのです。ありがたい。